ある日ボランティアさんが家出少年(未成年)を連れて来た。彼は三重県の実家から家出をして、友達の家を渡り歩いていた。
「家に居場所がない。帰りたくない‥」
両親はネグレクト(育児放棄)のような状態で、子どもの心配より社会的地位や周囲の目線の心配ばかり。自分が居ないかのように扱われ、ご飯もろくに作ってくれない。そんな家が嫌で嫌で仕方がなかったそうだ。
彼を保護するために市役所に連れて行くと、児童相談所に引き取られた。そこの児童相談所も彼曰く鍵をかけられ自由に出入り出来ない“監獄のよう”だったそう。
児相にも居たくなくて、職員さんに直談判すると
「家に帰るか、このまま児相に留まるか」の二択を迫られた。根気よく交渉を続け、なんとか「住み込みのバイトなら外出オッケー」とお許しをもらえたそうである。
早速住み込みで働けるバイトを探し、お仕事を頑張る。僕から見た彼はただの現実逃避小僧ではなく、とても頭も良くて客観的に自分を見て行動できる早熟で立派な子だった。
しかしそのバイトもかなりのブラックで、給料も支払れなくて結果的に居られなくなってしまう。
野宿や友達の家を転々としていたところ、ロータスに行き着いた。僕は連れてきてくれたボランティアさんと悩みに悩んだ。彼を匿って保護することは未成年だから犯罪になる。でもまた警察や児童相談所に通報しても何も解決にならない。場合によっては就職先や寝泊まりできる環境を見つけて、三重県の実家まで一緒に親御さんを説得することも考えた。でも「そこまでご迷惑はかけられない」と彼に断られてしまった。
八方塞がりである。
ありとあらゆるツテを使って色んな方にアドバイスを頂くことにした。そこでNPO法人陽和の渋谷さんに繋がることが出来た。NPO法人☀️陽和☀️|非行少年の立ち直り支援|名古屋
夜中に押しかけたのにも関わらず親身にお話を聞いてくれて、現場に詳しい専門家ならではのアドバイスをくれた。
「彼のご両親の場合こちらが正面から交渉しても話しが通じる相手じゃない。補導される前に警察や児童相談所に僕から話しを通しておくから大丈夫だよ」
そう言って強引に解決するのではなく、出来る限り本人の希望に沿った助言をしてくれた。僕だけでは到底ここまで話しは進まなかったと思う。
今までも同じように心に傷を抱えた子がロータスに来てくれたけど、その時はどうしていいか分からずあまり力になれなかった。
それは全部自分1人で解決しようとしていたからだ。
僕1人で出来ることなんてタカが知れてる。
幸い僕は色んな分野のプロフェッショナルとご縁がある。だったら餅は餅屋に任せて、そこまで繋げてあげることに専念した方がよっぽどいい。
今回渋谷さんに会って、その子の顔に笑顔が戻ってきた。
「もう大丈夫です、あとは何とかしてみます!本当にありがとうございました。」
そう言って彼は地元に帰っていった。
きっとまだまだ僕が知らないだけで、同じように誰にも相談できず苦しんでる子は沢山いるんだと思う。僕に出来ることはわずかかもしれない。でも何か力になれることがあるなら遠慮なく言ってほしい。
「実は知り合いの子が‥」とか「親戚の子なんだせど‥」とか何でもいい。とにかく抱え込まないで連絡下さい。
一緒にどうしたらいいか、考えましょ。