海外の空気を初めて肌で感じた。
日本と違う、どこまでも続くハイウェイ。
馬鹿デカく青い空。
英語の授業の倍くらい早い会話。
そのどれもが新鮮で、ワクワクが止まりませんでした。僕は自転車を組み立て、荷物を設置して旅立ちます。
「重っっ!!💦」
1ヶ月分の荷物です。テントと食料も入れたら40kg はあります。かるい2人乗りのような感覚で、僕は宿のある町まで行くことにしました。ふと看板を見上げると
“次の町まで150km”
おいおいマジか笑
一瞬頭が真っ白になります。名古屋から静岡県の端くらいの距離です。
まぁなんとかなるでしょ!笑
とペダルを漕ぎ出しました。
僕は旅を始めてすぐに大きな誤算をしていたことに気付きます。
①移動距離半端ない!!
次の町が遠い遠い!しかも自販機やコンビニなんてありません。あるのはだだっ広い草原のみ。ロードオブザリングの撮影地だけのことはあります。見渡し限り羊しかいません。
②雨、多すぎ!!
1日のうちで何度も降ったり止んだりします。僕の着替えはあっという間に全滅しました。
③サンドフライ
海外版の“蚊”です。ただし日本の蚊のように上品じゃありません。人間を見つけると、バーゲンセールのおばちゃんくらいワッとなって集まってきます。しかも一度刺されたら一週間はかゆみが引きません。O型汗かきの僕なんて、彼らからしたらスタバみたいなもんです。
こいつが朝起きると「おはよ♥️」と言わんばかりにビッシリとテントを囲んでるんです。一番の誤算はこいつでした。
④そんな治安よくないし!笑
日本と同じくらいですよ~と言われたが、路地裏でマッドマックスみたいなデカイおじさんに絡まれました。全力で逃げました。
そしてヘルメットも秒殺で盗まれました。もう日本に帰りたい…
そうしてなんとかかんとか、三日間過ごしたところで急に僕は寂しくなりました。テントでシクシク泣いてしまいました。
その原因はただ一つ。
「言葉の壁」です。
自分が困っているのに、何に困っているかを伝えることができません。それより辛いのが手を差し伸べてくれる人が何を言ってるのかもわからない事です。
この時ほど英語をちゃんとやっておけば!と後悔したことはありません。もってきた英会話帳は雨で使い物になりませんでした。
でもそんな壁も、1週間すれば慣れてきます。
そして現地の人の温かさに触れることができました。自転車が故障して手で押していた僕を、トラックの荷台に乗せてくれた親子。リンゴや沢山のフルーツを譲ってくれた農家のおじさん。僕と同じ独り旅をしているドイツ人なんて二人で徹夜で遊びました。
日本では当たり前のように日本語が話せて、泊まろうと思えばどこでも泊まれます。どこでもコンビニや自販機があって、生活に困ることなんてありません。
ニュージーランドではその全てが通用しませんでした。海外の独り旅では肩書きや知名度なんて一切通用しません。
ありのままの自分が、日本以外で通用するのか試されます。そして圧倒的な不自由を思い知らされ、己の無力さを痛感します。
でもその分、人の温もりは何倍も有り難く感じることができます。当たり前のことなんですが、僕は“独りでは生きていけないんだ”と実感することができました。
1ヶ月ちょっとの旅を終えて日本に帰ってきた時、お恥ずかしい話ですが迎えに来てくれた母親を見て少し泣きそうになりました。
僕は今までも沢山の人に支えられて生きてきたんだ、と心の底から思うことができたからです。
自分の意思で始めた旅は、今でも僕の心の中に生き続けています。
当たり前を「ありがとう」に
そう感謝し続ける人間でありたいですね。