何通も何通も受信フォルダにはお祈りメールが溜まっていく。母親から就活はどう?って言われても強がって「楽しいよ!」って嘘をついていた。
本当は楽しい訳がない。
面接まで行けばいいがそこまでがマジで難易度が高すぎる。俺が浪人なぞしようもんならアメフト部の連中に「やっぱアイツ負け犬だったな」と言われてしまう。それだけは避けたい。
面接対策は一切せず、とにかく俺はエントリーシート対策とSPI(筆記試験)の勉強をしまくった。そう、就活は頭も必要なのだ。SPIの模擬試験集を買って朝から晩まで近くのロイヤルホストで勉強しまくった。
筆記試験はまだいい。やればやるだけ傾向もわかるし、コツもわかってくる。猛勉の甲斐があり、無事各社の筆記試験はクリアした。
さて、問題なのはエントリーシートだ。何度同じ事書いても結果は一緒。俺はイチかバチかで個性を出しまくることにした。俺が考えた戦略はこうだ
〝どうせ何千枚と人事の人が見るのだから一際目立つシートにする作戦〟
長いな。
俺は早速文房具屋でマッキーを購入した。どうせやるなら中途半端な太さではなく、ポスターとかに書くぶっといやつ。そして文字数を半端じゃなく少なくした。今までボールペンでちまちまギッシリと書いていたエントリーシートは見違えるように見やすくなった。
そして何社もエントリーシートを出すのをやめた。
説明会で本当に行きたい、と思える会社を5社くらいに絞り本気で志望動機を書いた。あとは結果を待つのみ…
作戦は見事に的中した。
次々に面接のご案内メールが届いた。こうなればこっちのもの。インストラクターで鍛えたコミュ力を活かして面接に行きまくった。いよいよ俺のターンが来た。楽々5社くらい内定もらってやるわ、って思っていた。
しかし結果は惨敗。一番余裕で通ると思っていた会社の面接に落ちた。これにはかなり凹んだ。面接で落ちると自分自身を否定されたようでマジでこたえた。
ただここで諦めたら試合終了である。
俺は説明会の時に友達になり一次面接に通過した奴に二次面接の会場と日時を聞いた。
そして一次に落とされたのに二次面接の会場に行って人事の方にこう言った。
「どうしても御社で働きたくて、友達に聞いて来ました!5分でいいのでもう一度チャンスを下さい!!」
〝千と千尋の神隠し〟ばりに大声でお願いした。人事も所詮は人間である。「君みたいな子初めてだよw」と言ってなんと再度面接をしてくれた。営業を目指すからには一度断られたくらいで諦めていたら駄目だ。そうして俺はようやく初の内定…と思っていたが現実はそんなに甘くない。普通に面接で落とされた。
しかしもう凹んではいなかった。
俺は面接を落とされたショックよりも
「礼儀さえしっかりすれば、多少無理言っても聞いてもらえるんだ…」とエネルギーに満ち溢れていた。
ここから俺の、猛反撃が始まる。