それからというものの説明会、面接は何度落とされても諦めずに次の選考に行った。
そして現勤め先である某製薬メーカーの説明会に行き着いた、しかしそこは薬剤部専門の説明会だった。俺は知らない顔でしれーっと最前列の席に座り、質問をしまくった。周りの連中には常識的な説明も俺にとってはチンプンカンプンだったので何でも質問した。しかし人事も途中で気付き「君は後で残って、全部聞くから」と特別扱いをしてもらった。良いか悪いかは別にして就活なんて目立ったもん勝ちだ。俺はここぞとばかり自分をアピールした。
「すいません!実は薬剤部ではないんですが、一般の部は満席で入れなかったんで来ちゃいました!!でも来てよかったです、僕は御社が第一志望になりましたので」
人事は目を丸くした後、少しニッコリしてこう言った。
「内緒だけど僕のアドレス教えるからなんかあったら連絡して。君の名前は覚えたから」
俺はことあるごとに「どれだけ御社で働きたいか」文章力は無かったが熱心にメールした。
20000通のエントリーシートから最終面接に行き着いた人間は37人。
その中に低学歴でアメフト以外何も取り柄のない俺が選ばれていた。最終面接では俺は湯気が出ていた。人事の人柄に惚れ本当にこの会社で働きたいと思ってたからだ。最後に何か言いたい事はありますか?と言われ、俺はこう答えた。
「僕の気持ちはすべて伝えました。これで落とされたら門の前で張りついてでも内定を頂きます。」
爆笑が起こるかと思いきや、「はい、わかりました。」と冷静に終わった。今考えると恐ろしい事を言っていた。誰もが知っている一部上場企業のプレジデント、各取締役、重役の前でそんなことを言ってしまったのだ。無知が一番強い。
終わった…
率直にもうこれで駄目なら就活自体やめようと思っていた。しかし1週間後に内定通知の電話がきた。俺は道のど真ん中で大声で喜んだ。
親、恩師、友達全員が驚いていた。
「お前、一生分運使い果たしたな!」
とみんなに言われた。内定者はたった18名しかいなかった。周りの人間は3か国語以上喋れる超エリート高学歴集団である。
俺が既に辞めたアメフト部の連中は単位が足りずほとんどが留年した。無事単位がとれていた連中も名前も聞いたことない会社に落ち着いていた。
ざまぁみろゃ!!俺はまぐれでも超一流企業に就職してやったわ!と完全に天狗になっていた。
想像したのと違う世界だとは、この頃はまだ知らなかった。