内定者は18人。
超エリート集団だけかと思いきや、俺みたいなスポーツバカが結構いた。
いい会社だ。
MRは入社して半年間は田舎のホテルに缶詰にされ「MR認定試験」という民間資格を取るために毎日勉強させられる。
朝起きて勉強、授業前にテスト。授業後にもテスト、飯を食べて風呂入ったらまた勉強。
それを半年間。
でも全然辛くなかった。
同期の連中は最高にいい奴らばかりだった。風呂に入りながら夢を語り、酒を飲んでは愚痴をいい。土日には日頃溜まったストレスを発散するために筋トレしたり、バッティングセンター行ったり少ない同期だが1人1人と濃密な時間を過ごした。監獄のようだったが集団生活が平気な俺は全然苦では無かった。
俺より頭悪い奴もいたりしたがみんな無事試験に合格した。本当にあっという間だったが友情は時間じゃない。俺は同期と泣く泣く別れ、1人名古屋に向かった。
最初に配属されたのはド田舎だった。
山ばかりで限界集落みたいなところだった。やる気に満ち溢れていたが、そもそもクリニックや病院が少ないのですぐ行くところが無くて暇になった。それでも俺は「なんとかこの村を変えたい!」と必死になって仕事した。
2年目。遅くまで回った。
3年目。1人では何も変わらない現実に辛くなった。
4年目。気づいたらいつも駐車場でサボってる自分がいた。
それは本人でも気づかないうちに段々と、入社当初の燃え滾る炎はしだいに消えかかるロウソクの火のように小さくつまらないものになった。
薬は年数が経つと特許が切れる、するとCMでもやっている通りジェネリック医薬品という同じ成分で安い製品が世の中に出回る。そして医療費削減のため国は病院やクリニックがジェネリックを多く処方すれば儲かる制度にしている。当然所得も低く、高齢者が多い地域はいち早く安い薬にかわる。
営業に出ても、出なくてもジェネリックに変わった。
個人の力ではどうにもならない壁があった。
そう、全部言い訳だ。
でも俺は生まれて初めてやりがいのない、何をしても時間が経つのが遅い退屈な毎日を送っていた。木に実っているうちはどの果物もみずみずしい。しかし一度木から落ちて痛み始めるとすぐ腐ってしまう。その頃の俺は仕事もせず組織で売り上げビリになっていたためグズグズに腐りきっていた。
しかし腐っても一応金は入る。
時間は有り余っている。
となればもう遊ぶしかない!!
思えば中学、高校は男子校で大学もバイトばかりでほとんど遊んできていなかった…
俺は日頃のストレスや現実から逃げ出すため血反吐吐くまで遊びに遊ぶことにした。