片割れなのだから仕方ない。
そう思ったら心がスッと軽くなった。
だって普通の恋愛じゃないんだもん、特別な存在だから目で追っちゃっても仕方がないよね。
そう自分自身に言い聞かせ、僕は納得することにした。互いにパートナーがいても、片割れだから仕方ない…
え、仕方なく…なくない?
カラクリがわかったところで現実は1mmも変わらない。僕らは何度も電話で話し合いました。
「これ以上話したらお互いに好きになってしまう。今まで通り、普通の保護者とスタッフに戻りましょう」
彼女にそう言われた時も、気持ちは理解出来るけど本能がそれを拒絶しました。何としても彼女との関係を断ち切るな、と僕の全細胞が言ってくるんです。さて、困った…どうしたものか、
「わかった!〝ビジネスパートナー〟ということでどうかな?」
苦し紛れの妥協案。
もうそれが一番現実的な落とし所でした。
お互いがお互いの仕事をサポートし合う、そんなパートナーシップでいいよね?うんうん。
これでもう一安心。誰も傷付けないwin-winな関係だよな、うん
…全部嘘だ。
僕は肝心なところでいつも嘘をついてしまう。本当は好きなのに立場上偽って関係を続ける。その事がどれだけ自分達を傷付けてしまうかわかってるはずなのに。

結局のところ怖いのだ。
今まで築き上げてきた信用が全部水の泡になる。沢山の人を傷つける。いや、それすらも嘘。本音はただみんなに嫌われたくないだけ。
失望されるのが、ただただ怖い。
僕がどれだけ声を上げたって、法律が許さない。心がどれだけ正直に生きろと言っても、社会がそれを認めない。
婚姻制度なんて紙きれ一枚の話だ。
どれだけ2人の愛情が冷めてしまっていても、社会が夫婦といったら夫婦だ。それ以外に好きな人が出来てしまったら、もうそれはどんなに純粋な気持ちだろうがいけないこと。
それがこの社会のルール。
「すべては最高最善のカタチに収まるよ」
彼女がそう言ってくれても、当時の僕には信じられませんでした。スピリチュアルでも、統合でも、シータヒーリングでも社会のルールは変えられない。
僕はそんな現実の壁にぶち当たり、苦しくて苦しくて仕方ありませんでした。
つづく