
私たちが毎日、当たり前のように車を走らせている道路。道路の白線。信号のない交差点の停止線。横断歩道のあのシマシマ。お恥ずかしながら毎日目にしているのに、誰が、どうやって描いているのか考えたことすらありませんでした。
今回は、区画線工事・安全施設整備を手がける「日本道路システム」さんに、現場のリアルを聞かせてもらいました。話してくれたのはこの道19年のベテラン、福司さんです。
「ただ線を引くだけの仕事でしょう?」――もしそう思っているなら、この記事を読み終える頃には、道路を見る目が180度変わっているはずです。誰もが見たことがあるはずなのに、なかなか知られていない「ライン職人の世界」をお届けします。
高速道路の真横で神経をすり減らした15年間
福司さんが株式会社日本道路システムにやってきたのは、今から19年前のこと。それ以前は、旧・日本道路公団(現在のNEXCO)の管轄で、高速道路の維持管理をする仕事に15年ほど携わっていました。
樹木の伐採から、雪の日の塩カル(融雪剤)撒き、そして突発的な交通事故や車両火災の復旧まで、道路のあらゆるトラブルに対応する過酷な日々。現場は、車が時速100kmでビュンビュンと飛び交う高速道路です。
「最初はドキドキでしたが、人間って不思議で慣れちゃうんですよね。100kmで車が飛んでくるところを、一人で平気で横断したりしました。」
命の危険と隣り合わせなだけではありません。
緊急対応が求められるため、休日に旅行へ行きたくても行けない。夜寝る時も常に電話を握りしめ、鳴れば1時間以内に現場へ急行しなければならない「24時間待機」のような状態だったそうです。
「当時は『使われている』という感覚でした。褒められることもないし、ただひたすらにこなすだけ。メンタル的にもいっぱいいっぱいでした。」

「使われている」から、「仲間とやる」感覚へ
精神的にも体力的にも限界を感じ、「もう無理だ」と転職を考えていた福司さん。そんな時、偶然声をかけてくれたのが、株式会社日本道路システムの前社長でした。
「行くところがないなら、うち来るか? 命取られることないから、そんなに考えなくていいよ」
張り詰めていた糸をフッと緩めてくれるような、その温かく人情味あふれる言葉に救われ、福司さんは未知なる「区画線(道路のライン引き)」の世界へ飛び込むことを決めました。
実際に転職してからは「仲間とやるっていうのもあるし、楽しいですね」。現社長は新しいことにチャレンジする人を積極的に応援してくれます。新城本店の社員は16人と毎日顔が分かるぐらいの距離感で、「基本的には優しい人ばかり」というアットホームな職場とのこと。長く働き続ける人が多いのも、職場環境が良い証拠です。
入社当時の福司さんは、「ただ現場に行って、言われた通りに色をつけていくだけの仕事」だと思っていたそうです。しかし、そこで待っていたのは、想像を超えるほど奥深い職人の世界でした。
「ただ線を引くだけ」じゃない、職人のこだわり
道路に引かれている線は、ただ図面通りに真っ直ぐ引けば良いというものではありません。
「道路って、実は少し傾いていたり曲がっていたりするんです。図面通りの寸法で線を引くと、人間の目には逆に歪んで見えてしまう。そこを自然なカーブに見せるように微調整していくのが、職人の『感性』なんです」
現場はまさに時間と自然との戦い。塗料は200度近くまで熱して使用するため、真夏の現場は路面の照り返しも合わさって灼熱地獄です。(現在は会社から最新の空調服が支給されています)
「ライン1本にしてもすごいこだわって引いているなって思いました。素人目で見ると真っすぐな線に見えても、職人から見れば『これ曲がってるよ』と言うんです」
天候を読み、路面の状態を把握し、図面を引き、寸分狂わず線を描く。矢印の種類、停止線のサイズ、横断歩道の施工時間の規定など、覚えることは多岐にわたります。職人の登竜門でもある国家試験では、決められた寸法を約30分という時間内に施工できるかが問われます。それが熟練の職人になれば、複雑な横断歩道や矢印の作図もたった5分、塗りも含めて15分足らずで仕上げてしまいます。
「どんなに時代が進んでも、その日の天候や路面の状況を見て、臨機応変に線を引くこの仕事はAIには絶対にできません。人間が状況を見てやるしかないんです」

「父ちゃんが引いた線なんだぞ」と息子に胸を張れる仕事
線の引き方ひとつで、事故の確率は変わる。雨の日、視界が悪い夜、少しでも見やすい線があれば、防げる事故がある。普段は意識されない場所に、確かな使命が息づいています。
「交通事故で悲しむ人を少しでも減らしたい。それが僕たちの仕事の根底にあります。だからこそ、線一本にもこだわるんです」
一番のやりがいは、自分が手がけた仕事が「形」として街に残り続けること。 三井アウトレットパークのような巨大な駐車場のラインを、オープン直前のギリギリのスケジュールで仲間と共に引き切った時の達成感。そして、休日に家族を車に乗せて走っている時、息子に一言。
「ほら、ここ。父ちゃんが引いた線なんだぞ」
確かに夏は暑く、冬は寒い。決して楽な仕事ではありません。しかし、クーラーの効いた部屋でパソコンと向き合うだけでは得られない「生きている実感」と、「街のインフラを守っている」という揺るぎない誇りがここにはあります。
インタビューを終えて
〝楽に稼げる仕事がしたい〟と、条件だけを見れば大手のホワイトカラー職に人気が集まりがちな時代。それでも、こうした目に見えない人々の暮らしを支える仕事の魅力に導かれてたどり着く人がいる——そこに、この仕事の本当の価値があるのかもしれません。
「変わりが効かない人間になりたい人、本気で手に職をつけたい人には最高の環境ですよ」と笑う福司さんの顔は、真夏の太陽に負けないくらい充実感に満ちて輝いていました。
あなたも、この温かいチームの一員として、新城の街に「安全」という名の線を描いてみませんか?
奥深い職人の世界にハマってしまうかもしれませんよ。

【企業データ】
株式会社日本道路システムの実績と専門性
株式会社日本道路システムは、道路区画線や交通安全施設の施工において、地域トップクラスの機動力と専門技術を有するプロフェッショナル集団です。
事業内容: 路面標示工事(横断歩道、停止線、センターライン等の施工・抹消)、交通安全施設工事(ガードレール、標識、カーブミラー等の設置)
専門技術と設備:
悪天候後でも迅速な施工を可能にする超高圧・熱風路面乾燥機(ジェットタービンエンジン搭載)を自社保有。
溶解塗料施工機をはじめ、多様な道路状況に対応する特殊機材を完備。
保有資格:
路面標示施工技能士(国家資格)
土木施工管理技士(1級・2級)
実績データ: 新城市および東三河エリアの国道・県道・市道はもちろん、新東名高速道路や大型商業施設(三井アウトレットパーク等)の広大な駐車場施工まで、高い精度が求められる現場を多数完遂。
働く環境: 新城本店従業員数16名。㈱日本道路システム全体では41名。空調服の完全支給など、過酷な現場環境を緩和するためのサポート体制を整備。未経験からでも「国家資格」の取得を目指し、一生モノの技術を身につけられるフォロー体制が整っています。












