彼女からこう言われた男の反応は2パターンある
思考停止して、頭が真っ白になるパターン。だいたい2人にとって不幸な結末になることが多い。
2つ目はその言葉を聞いたとたん飛んで喜び、まだ見ぬ子供に想いを馳せてニヤニヤが止まらなくなるパターン。
俺は後者だった。
今までの彼女だったら間違いなく前者パターンだっただろう。でも今の嫁(当時の彼女)は生まれて初めて自分より大切だと思った存在だった。初めて親に紹介したい人だったし、老後まで一緒にいたいと思える人だったからだ。
同棲のご挨拶をした一週間後に俺の人生の転機が訪れた。それは仕事中の急な電話だった。
俺はすぐさま彼女の家に駆けつけて車の中でプロポーズをした。「子供ができた責任とかじゃなく、俺は一生君といたい。結婚して下さい」ロマンチックのカケラもないプロポーズだったが、精一杯の飾らない言葉で伝えた。
これで晴れて家族の出来上がり…と俺が思っているより現実は甘くなかった。
まさか反対してきたのは俺の母親だった。
すぐさま連絡すると
「出来ちゃった結婚だけはやめて欲しかった。もう会いたくありません」
予想を180度裏切る答えが返ってきた。
俺は東京にある実家に帰った。
〝この日に帰る〟と連絡したのにも関わらずオカンはそこに居なかった。
友達もいない母親なのですぐに帰ってくると思ったが一向に帰ってこない。電話をしても繋がらない。
55歳の母親が家出したのだ。
しかも犯罪を犯した訳でもなく、借金の肩代わりをして逃げてきた訳でもなく
結婚の報告なのに。
俺は悲しくなった。
でも諦めず置き手紙を書いた。
「母さんへ。女手一つで育ててくれたこと、本当に感謝しています。仕事で名古屋に転勤になり、ろくに連絡してこなかったくせに急に出来ちゃった婚になったなんて信じられないのもわかる。でも信じて欲しい。俺は母さんを絶対に悲しませるような事はしない。必ず幸せな家庭を築くから。だから結婚を認めて下さい、お願いします。」
すると一週間後くらいに母から連絡があった。
「手紙ありがとう。向こうのご両親にもちゃんと挨拶しなくちゃいけないから次の休みにそっちに行きます」
俺はご両親の挨拶の前に嫁と顔合わせをすることにした。生涯を共にする人を見て欲しかったからだ。
2人は会ってすぐさま泣き出した。
きっとオカンは心配で、嫁も不安だったんだ。
少し話をしたらちゃんとステキな人だということを理解してくれた。
そのあと両家の顔合わせが終わり。晴れて結婚することができた。
さぁこれからがいよいよ起業するに至った物語の始まりです。もうしばらくお付き合いください…