高校では全国2位まで登りつめた。校長からはスパイクがメンバー全員にプレゼントされ、グランドは土から人工芝に変わった。汚かった部室は綺麗になり、シャワー室も完備された。
アメフト部員は学年のスターみたいな扱いを受けた。
卒業式では男子校なのに全員が泣いていた。
鬼の学年主任もその時ばかりは大号泣して抱きしめてくれた。俺も泣き過ぎて頭が痛くなるくらい泣いた。本当にいい先生達に恵まれた。
余談だが、この学年主任の先生は今でも毎年家に行って語り合う仲だ。
しかしまるで青春ドラマのような高校生活から一転。地獄の大学生活が始まる。
スポーツ推薦で入学した俺ははっきり言って期待の星だった。コーチはチヤホヤしてくれて、「すぐにスタメンで出す」と言ってくれた。
俺はこの時、その言葉の重みを知らなかった。
1年生の俺がスタメンになるということは、3年生の先輩が俺の控えになるということだ。俺はその時、そんな事にまで気が回らなかった。3年生は面白いはずがない。平日は俺をチヤホヤしてくれるコーチがいない。
するとどうなるか
自然と先輩方の〝可愛がり〟が始まる。
同じ1年の中で俺だけが何度もやり直しされる。プレーでミスをすると延々と灼熱のグランドを走らされた。アメフトってスポーツはつくづく夏に向いていない。あんな防具を身体中につけて走りまくっているとすぐに熱中症になるからだ。グランドの隅で吐きまくってる俺を見て先輩達がかけてくれた言葉
「サボってんじゃねぇよ」
それが毎日である。俺は精神的にかなりヤバくなっていった。ホームで電車を待っているとフラッと降りたくなった。飯も食えなくなり、みるみる痩せていった。そして痩せると先輩から「明日までに3kg太ってないと殺す」と言われ俺はマックを吐きそうになるまで食べて計量前に2リットルの水を全部飲んでなんとかクリアした。限界だった。
グランドを見るだけで吐いた。
夢の中でもグランドを走ってる。
汗びっしょりになりながら夜中に飛び起きる。
精神科にいったら「自律神経系失調症」と診断されめちゃ強い睡眠薬が処方された。堪らずに親に相談した。
「母さん、俺辞めたい」
母親からはまさかの言葉が返ってきた。
「あんたスポーツ推薦なのに辞めたらどうすんの!?絶対認めないから」
その日から俺は1ヶ月間部屋から出れなくなった。